幽玄衆の物語

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第十四話 紅椿、誘いの座敷

その夜、黒鴉派の屋敷に忍び込んだ者があった。塀を越え、庭木の陰を伝い、奥座敷に近づこうとしたところを、見廻りの忍に取り押さえられた。「頭首様。曲者にございます。幽玄衆の者にはあらず、得体の知れぬ気配にございます」報告を受けた紅椿は、しばし思...
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第十二話 群がる影

その夜、異変は一つではなかった。郊外の三箇所で、同時に気配が立った。凪、紅椿、焔――たまたま近くにいた三人が、それぞれ別の場所から駆けつけることになった。「――多いな」焔が最初に到着した場所には、黒い塊が五つ、六つと蠢いていた。今までの比で...
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第十一話 稽古の合間に

稽古の後、若い月影の忍が、汗を拭いながら凪に尋ねた。「凪様。鬼面と、あの……禍とは、同じものにございますか」「違う」凪は短く答えた。それだけでは足りぬと思ったか、少し続けた。「鬼面は、幽玄衆の先人が遺したもの。装着すれば、力を与えてくれる。...
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第十話 四たび目の兆し

明治の街外れ、灯りの絶えた路地。焔は一人、気配を追っていた。予言めいたあの符のことは、風の噂で耳にしていた。「兆しは四たび至る」――ならば、探して潰すまでだ。路地の奥、空気が歪んでいる。目には見えぬ揺らぎ。焔はそこへ向かって、迷わず踏み込ん...
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第九話 白い符、届く夜

夜半、朧が自室に戻ると、文机の上に見慣れぬものが置かれていた。白い紙片、一枚。誰が置いたのか、番の忍に問うても要領を得ない。誰も見ていない、という。紙片には、墨で短くこう記されていた。「兆しは、四たび至る。刻限、近し」差出人の名はない。ただ...
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第八話 四頭首、集う夜

久方ぶりに、三派の頭首が一堂に会した。朧、紅椿、焔。円座に着く三人の間に、凪が静かに控えている。「禍の兆し、三度目にございます」紅椿が扇を閉じたまま口を開いた。「悠長には構えておられませぬ」「だから言ってんだろ」焔が割り込む。「見つけ次第、...
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第七話 封じるか、滅ぼすか

「――そんなやり方じゃ、間に合わねえって言ってんだよ」焔の声が、珍しく尖っていた。帳内の一室、緊急の招集の後。残ったのは朧と焔、二人だけだった。「禍の兆し、もう三度目だ。あんたはまだ"封じて待つ"つもりか」「五封の律は、先人が定めしもの。軽...
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第六話 凪三巡 —— 覚えのない道筋

外務ミッションの途中、凪は見知らぬはずの町並みを歩いていた。地図にはない裏道。それなのに、足取りに迷いがない。「――なぜ」立ち止まり、凪は自分の足元を見た。この角を曲がれば井戸がある。その先に古い社がある。知っているはずのない土地で、次に何...
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第五話 黒鴉、月影を試す

黒鴉派の茶室に、朧は招かれていた。合同会議の後、紅椿がそう望んだのだ。「月影の頭首様には、ゆるりとしていただきたく」紅椿は自ら茶を点てた。所作の一つ一つに無駄がない。扇を置き、袖を軽く払い、茶碗を朧の前に置く。「畏れ入る」朧は短く応え、茶碗...
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第四話 焔、皮肉を三つ数える

「よう、月影の頭首様」廊下の角で、焔は朧を見つけるなり片手を挙げた。マスクの上、隻眼の視線が愉快そうに細まる。「……焔か」「相変わらず愛想がないねえ、あんた」焔はわざとらしく肩をすくめた。朧は歩みを止めず、焔の隣を通り過ぎようとする。それを...