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第九話 白い符、届く夜

夜半、朧が自室に戻ると、文机の上に見慣れぬものが置かれていた。白い紙片、一枚。誰が置いたのか、番の忍に問うても要領を得ない。誰も見ていない、という。

紙片には、墨で短くこう記されていた。

「兆しは、四たび至る。刻限、近し」

差出人の名はない。ただ、紙の端にほのかに、香が焚きしめられている。紫がかった、涼やかな香りだった。幽玄衆の誰の趣味でもない。

朧は紙片を手に取り、しばし眺めた。筆致は流麗で、迷いがない。時を読む者――そんな言葉が、ふと頭をよぎった。誰から聞いた言葉かは、思い出せない。

窓の外、月は雲に隠れていた。誰かが見ている。そんな気配だけを残し、夜は静かに更けていく。

朧はその紙片を、誰にも見せず懐にしまった。もう一つ、抱える謎が増えたことだけを、確かに感じながら。


次話へ続く。

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