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第六話 凪三巡 —— 覚えのない道筋

外務ミッションの途中、凪は見知らぬはずの町並みを歩いていた。地図にはない裏道。それなのに、足取りに迷いがない。

「――なぜ」

立ち止まり、凪は自分の足元を見た。この角を曲がれば井戸がある。その先に古い社がある。知っているはずのない土地で、次に何があるかを、体が覚えている。

夢か。あるいは、幼い頃に一度だけ来たことがあるのか。凪は記憶を辿ろうとしたが、何も出てこない。ただ、体だけが道を知っていた。

社の前まで来て、凪は息を呑んだ。小さな祠に、まだ新しい花が供えられている。あの御廟のものと、同じ花だった。

「……」

誰が。なぜ、ここにも。

凪はしゃがみ込み、花に触れかけて、その手を止めた。触れてはならぬ気がした。理由は分からない。ただ、そう感じた。

任務を思い出し、凪は立ち上がった。振り返らず、その場を後にする。

歩き去る凪の背を、祠の陰から見つめる者があった。凪は気づかない。かつて自分を育てた、あの声も、あの気配も、もう長らく感じていないというのに――今この瞬間だけ、懐かしい何かが、すぐ近くにある気がした。

気のせいだと、凪は思うことにした。


次話へ続く。

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