稽古の後、若い月影の忍が、汗を拭いながら凪に尋ねた。
「凪様。鬼面と、あの……禍とは、同じものにございますか」
「違う」
凪は短く答えた。それだけでは足りぬと思ったか、少し続けた。
「鬼面は、幽玄衆の先人が遺したもの。装着すれば、力を与えてくれる。友のようなものだ」
「では、禍は」
「禍は、外から来る。力など与えぬ。ただ喰らい、壊すだけのもの」
若い忍は、腑に落ちたようにうなずいた。
「では、鬼面は探して集め、禍は見つけ次第、討つと」
「その通りだ。……よく分かったな」
凪の口元が、僅かに緩んだ。珍しいことだった。
「凪様に稽古をつけていただいたおかげにございます」
「世辞はいらぬ。次だ、構えろ」
短くそう言うと、凪は再び木刀を構えた。若い忍も慌てて姿勢を正す。
夕暮れの稽古場に、木刀のぶつかる音だけが、しばらく響いていた。
コメント