久方ぶりに、三派の頭首が一堂に会した。朧、紅椿、焔。円座に着く三人の間に、凪が静かに控えている。
「禍の兆し、三度目にございます」紅椿が扇を閉じたまま口を開いた。「悠長には構えておられませぬ」
「だから言ってんだろ」焔が割り込む。「見つけ次第、叩く。それでいいじゃねえか」
「――軽々しきこと」紅椿の声が、僅かに冷えた。「黒鴉派の流儀にはあられぬ考えにて」
「あんたの流儀なんざ知るかよ」
「焔」
朧が短く制した。それだけで、焔は肩をすくめて口をつぐんだ。紅椿もまた、扇の陰でわずかに息をついた。
「五封の律、まだ完成には遠い」朧は静かに続けた。「されど、悠長にする猶予もなきこと、承知しておる。まずは各派、探索を急ぐ。それしかあるまい」
「……御意」
紅椿が頭を垂れる。焔は不満げながらも、それ以上は言わなかった。
控えていた凪は、三人の頭首を見比べながら、ふと思った。この場に、四人目の――かつていたはずの誰かの気配が、ないことに。
誰のことか、凪自身にも分からなかった。ただ、円座の隅に、僅かな空白があるように感じられた。
夜はまだ、深い。
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