※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

第八話 四頭首、集う夜

久方ぶりに、三派の頭首が一堂に会した。朧、紅椿、焔。円座に着く三人の間に、凪が静かに控えている。

「禍の兆し、三度目にございます」紅椿が扇を閉じたまま口を開いた。「悠長には構えておられませぬ」

「だから言ってんだろ」焔が割り込む。「見つけ次第、叩く。それでいいじゃねえか」

「――軽々しきこと」紅椿の声が、僅かに冷えた。「黒鴉派の流儀にはあられぬ考えにて」

「あんたの流儀なんざ知るかよ」

「焔」

朧が短く制した。それだけで、焔は肩をすくめて口をつぐんだ。紅椿もまた、扇の陰でわずかに息をついた。

「五封の律、まだ完成には遠い」朧は静かに続けた。「されど、悠長にする猶予もなきこと、承知しておる。まずは各派、探索を急ぐ。それしかあるまい」

「……御意」

紅椿が頭を垂れる。焔は不満げながらも、それ以上は言わなかった。

控えていた凪は、三人の頭首を見比べながら、ふと思った。この場に、四人目の――かつていたはずの誰かの気配が、ないことに。

誰のことか、凪自身にも分からなかった。ただ、円座の隅に、僅かな空白があるように感じられた。

夜はまだ、深い。


次話へ続く。

コメント

タイトルとURLをコピーしました