任務の帰り、凪はひとり夜道を歩いていた。先代の御廟のことが、頭から離れない。誰が花を供えているのか。門番の誰も見ていないというのに。
ふと、覚えのある道に足が向いていることに気づいた。御廟へ続く道だ。無意識に、そちらへ向かっていた。
御廟の前に立つと、確かに花があった。まだ瑞々しい。今朝供えられたばかりのものだろう。
「……」
凪はしゃがみ込み、花に触れた。この花を、先代は好んでいた。誰が知っている。朧は知らぬはずだ。月影派の記録にも、これほど細かくは残っていない。
――なぜ、自分はこの花の名を知っているのだろう。
考えかけて、凪はすぐにその疑問を手放した。深く考えるまでもない、些細なことだと。ただ懐かしいだけだと。
御廟に一礼し、凪は踵を返した。歩き出してすぐ、背後で風もないのに、供えられた花が微かに揺れたことには、気づかなかった。
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