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第三話 凪二巡 —— 影の長さ

任務の帰り、凪はひとり夜道を歩いていた。先代の御廟のことが、頭から離れない。誰が花を供えているのか。門番の誰も見ていないというのに。

ふと、覚えのある道に足が向いていることに気づいた。御廟へ続く道だ。無意識に、そちらへ向かっていた。

御廟の前に立つと、確かに花があった。まだ瑞々しい。今朝供えられたばかりのものだろう。

「……」

凪はしゃがみ込み、花に触れた。この花を、先代は好んでいた。誰が知っている。朧は知らぬはずだ。月影派の記録にも、これほど細かくは残っていない。

――なぜ、自分はこの花の名を知っているのだろう。

考えかけて、凪はすぐにその疑問を手放した。深く考えるまでもない、些細なことだと。ただ懐かしいだけだと。

御廟に一礼し、凪は踵を返した。歩き出してすぐ、背後で風もないのに、供えられた花が微かに揺れたことには、気づかなかった。


次話へ続く。

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