その夜、凪は稽古場に一人、座り込んでいた。小夜の木刀を、両手で握りしめたまま。
「……守れなかった」
「凪」
焔が、静かに歩み寄ってきた。フードの下、隻眼にも、隠しきれない痛みがあった。
「私が、あの子を指導係になどしなければ」
「どっちのせいでもねえよ。悪いのは、あの日儀式を狙った奴らだ」
焔は、凪の隣に腰を下ろした。
「省の連中か、禍そのものか知らねえが……あたしは、もう待てない。あの子の墓前で誓う。次は、あたしらが先に叩く」
凪は、木刀を強く握りしめた。
「私も、もう黙って見てはいられぬ」
二人は、しばらく無言だった。夜風だけが、二人の間を吹き抜けていく。
「小夜の分まで」凪が呟いた。
「ああ」焔が頷いた。
その夜、二人は静かに、しかし確かに、覚悟を決めた。
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