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第十三話 省の奥、灯る一室

深夜、明治政府のとある省庁の奥、灯りの絶えぬ一室があった。表向きは書庫。だが中に通される者は、限られている。

「郊外にて、また”異変”の報告が」

若い官吏が、書類を差し出す。上座の男は、それを一瞥もせず脇に置いた。

「例の筋からの報せか」
「はい。此度は規模が大きく……住民の目撃も多く、揉み消しに手間取ったと」
「構わぬ。揉み消しは、いつものこと」

男は、窓の外の闇へ視線を向けた。

「それより、力の高まりの方はどうだ」
「儀式の記録によれば、確かに……いつもより濃い、と」

男の口元が、僅かに緩んだ。笑みと呼ぶには、あまりに冷たいものだった。

「良い兆しだ。あの一派が動いているうちは、こちらの手も汚れずに済む」
「幽玄衆、にございますか」
「名は出すな」

男は静かに、しかし鋭く制した。若い官吏は、頭を下げる。

「して、いかがいたしましょう」
「放っておけ。奴らが暴れれば暴れるほど、こちらの”暦”は満ちる。手出しは無用」

男は立ち上がり、窓辺へ歩み寄った。夜の街を見下ろしながら、独り言のように呟く。

「せいぜい、励むがいい。知らずに我らのために働いてくれるとは……律義なことよ」

若い官吏は、その言葉の意味を測りかね、ただ黙って控えていた。


次話へ続く。

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