幽玄衆の物語

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第四話 焔、皮肉を三つ数える

「よう、月影の頭首様」廊下の角で、焔は朧を見つけるなり片手を挙げた。マスクの上、隻眼の視線が愉快そうに細まる。「……焔か」「相変わらず愛想がないねえ、あんた」焔はわざとらしく肩をすくめた。朧は歩みを止めず、焔の隣を通り過ぎようとする。それを...
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第三話 凪二巡 —— 影の長さ

任務の帰り、凪はひとり夜道を歩いていた。先代の御廟のことが、頭から離れない。誰が花を供えているのか。門番の誰も見ていないというのに。ふと、覚えのある道に足が向いていることに気づいた。御廟へ続く道だ。無意識に、そちらへ向かっていた。御廟の前に...
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第二話 紅椿一巡 —— 蜘蛛は網を絶やさぬ

黒鴉派の奥座敷に、灯りは一つだけ。紅椿は文机の前に座し、動かぬ。だが座敷の隅、闇に紛れた者があることを、とうに承知していた。「――随分と、無粋な訪いにございますこと」紅椿は振り向かず、扇を開いた。闇の中の者が、微かに息を呑む気配。「何用あっ...
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第一話 月の庭にて

月影派の庭に、朧はひとり立っていた。夜半、白い息すら凍る刻限。刀を抜き、振る。音もなく、影も残さず。素振りを百に数えたところで、朧はふと手を止めた。気配が近い。振り向かずとも分かる。「凪か」「はい」音もなく現れるのは凪の癖だ。今宵も庭の隅か...